絶対採用できる言葉は存在するのか?〜採用担当者が陥りやすい3つの落とし穴と突破口〜
はじめに
「フラれない言葉」「キラーワード」——営業の世界ではよく耳にするフレーズです。 では、採用の現場においても「これを言えば必ず採用できる」という魔法の言葉は存在するのでしょうか。
結論から言えば、採用には絶対的なキラーワードは存在しません。 なぜなら、採用は「商品を売る」営利活動とは異なり、人の人生を左右する意思決定だからです。
しかし、だからといって「言葉の力」が不要なわけではありません。むしろ、採用活動における言葉は、応募者の心を動かし、入社意欲を高める重要な要素です。 本記事では、採用がうまくいかない企業が陥りやすい3つの課題を整理し、応募者に「明日にでも入社したい」と思わせるための言葉と姿勢について掘り下げます。
母集団形成ができない(応募が来ない)
勘違いされやすい原因
多くの企業が「応募が来ないのは給与や休日の条件が悪いから」と考えがちです。 しかし実際には、給与や休日はある一定の水準を超えていれば大きな差別化要因にはなりません。
本当の原因
- 求人票の整合性が取れていない
- 他社と比較して魅力が伝わっていない
- 応募者が「自分ごと」としてイメージできない
例えば、アルバイトの方が稼げるような給与例を載せていたり、休日条件が曖昧だったりすると、応募者は「この会社は信頼できない」と感じます。
解決のヒント
- 休日の表現を工夫する
- 「完全週休二日制(土日休み)」と「シフト制で平日休み」では、応募者層が大きく変わります。
- 平日休みを好む人は「役所や銀行の手続きがしやすい」「趣味に集中できる」などのライフスタイルを持っています。
- 土日休みを好む人は「家族や友人と予定を合わせたい」「イベントに参加したい」などの価値観を持っています。
求人票に「どんな人に向いているか」を明確に書くことで、応募者は「自分に合っている」と感じやすくなります。
面接が長い(口説きに走っている)
面接の本質を見失う企業
応募者が来てくれると、つい「自社の魅力を伝えなければ」と思い、面接が説明会のようになってしまうケースがあります。 しかし、面接の本質は「応募者を評価すること」です。
面接が長引く悪循環
- 応募者は「この会社は残業が多そう」「押しが強い」と感じる
- 採用担当者は「まだ入社を決めてくれない」と焦る
- 結果、さらに口説きに走り、面接が長引く
応募者からすれば、これは「入社営業」を受けているようなもの。 営業なら「買い直せばいい」ですが、転職は人生を左右するため、簡単には決断できません。
解決のヒント
- 面接は20分以内を目安にする
- 応募者の人柄・考え方・能力を引き出す質問を中心にする
- 会社の魅力は「応募者が知りたいこと」に絞って伝える
応募者は面接官を通じて会社を評価しています。 「この人のようになりたい」と思わせる面接官を配置することが、最大の説得力になります。
内定辞退が多い(応諾率が低い)
応募者の心理
内定を出した瞬間、応募者は「この会社に入らなくてもいい」と冷静に比較を始めます。 なぜなら、面接中に過剰に持ち上げられると「本当に大丈夫なのか」と不安になるからです。
採用と営業の違い
営業は「勢い」で契約を取ることができます。 しかし採用は、応募者の人生を背負う決断。勢いだけでは決まりません。
応募者は「この会社に入社したら、自分のキャリアや生活はどう変わるのか」を冷静に考えます。 そのため、採用活動は「口説く」よりも「評価し、理解し合う」ことが重要です。
解決のヒント
- 面接を録音して振り返る
- 「営業トーク」ではなく「相互理解の場」として面接を設計する
- 応募者のキャリア観や価値観を尊重し、誠実に向き合う
応募者に響く言葉とは
「絶対採用できる言葉」は存在しません。 しかし、応募者の心を動かす言葉は確かにあります。
- 「なんでこの会社を今まで知らなかったんだろう」
- 「明日にでも入社したいです!」
こうした言葉を引き出すには、応募者が自分の未来をポジティブに描けるような面接体験を提供することが不可欠です。
採用担当者が意識すべきこと
- 応募者を評価する姿勢を忘れない
- 面接は「口説く場」ではなく「評価の場」。
- 面接官自身が会社の顔であることを自覚する
- 応募者は「この人のようになりたい」と思えるかどうかで判断する。
- 営業感覚を捨てる
- 採用は「売る」活動ではなく「共に働く仲間を選ぶ」活動。
おしまい
- 採用活動に「絶対採用できる言葉」は存在しない
- 応募が来ないのは給与や休日だけが原因ではない
- 面接が長いのは「口説き」に走っている証拠
- 内定辞退が多いのは「営業的採用」の弊害
- 応募者に響くのは「未来を描ける言葉」
採用は企業の根幹であり、最も難しい経営活動のひとつです。 しかし、シンプルに考えれば答えは明快です。
「応募者を誠実に評価し、相互理解を深める」
この姿勢こそが、応募者に「ここで働きたい」と思わせる最大の言葉になるのです。


