35回の歴史に幕。糸魚川「日本海クラシックカーレビュー」が地域に残したもの
はじめに
磨き上げられたボディ。
丸いヘッドライト。
細いステアリング。
今のクルマではあまり見ることのないデザイン。
そして、一台一台から漂う独特の存在感。
2026年9月6日。
新潟県糸魚川市のフォッサマグナミュージアムで、
「第35回 日本海クラシックカーレビュー」
が開催されました。
会場に集まったのは、
1974年以前に製造された国産車や外国車、130台。
さらに、
クラシックカーが糸魚川市内を走るジョイフルラリー。
ボンネットバスの展示。
特別展示車両。
クラシックカーが好きな人はもちろん、家族連れや地域の人たちも楽しめるイベントとして開催されました。
しかし、
今回の日本海クラシックカーレビューには、これまでとは違う意味がありました。
35回続いてきたこのイベント。
今回が、最後の開催とされています。
35回。
ただ数字だけを見ると、
「長く続いたイベントだった」
という言葉で終わってしまうかもしれません。
しかし、
35回続くということは、
単に35回イベントを開催したということではありません。
そこには、
参加する人がいて。
楽しみにする人がいて。
運営する人がいて。
支える人がいて。
長い時間をかけて、
少しずつ糸魚川の文化になっていったということです。
今回は、
日本海クラシックカーレビューを通じて、
「イベントが地域に残すもの」
について考えてみたいと思います。
1974年以前のクラシックカー130台が糸魚川に集結
2026年9月6日に開催された、
第35回 日本海クラシックカーレビュー。

会場は、糸魚川市のフォッサマグナミュージアムです。
展示されたのは、1974年以前に製造された国産車・外国車130台。
現在では街中で見かけることがほとんどなくなったクルマが、
一堂に集まりました。
現代のクルマとは違う、
個性的なボディライン。
クロームメッキ。
丸いヘッドライト。
独特のエンジン音。
内装の質感。
一台一台を見ているだけでも、
その時代の空気を感じることができます。
クラシックカーの面白さは、
単に「古いクルマ」というだけではありません。
一台一台が、
その時代のデザイン。
技術。
価値観。
そして、
人々の暮らしを映し出しています。
言ってみれば、
走る歴史資料のような存在です。
糸魚川の街をクラシックカーが走る
日本海クラシックカーレビューの特徴の一つが、
「ジョイフルラリー」です。
展示されているだけではなく、
クラシックカーが実際に糸魚川市内を走ります。
博物館で見る展示物とは違います。
エンジンをかける。
走る。
曲がる。
止まる。
何十年も前につくられたクルマが、
今も現役で街を走る。
その姿を見ることができるのです。
沿道でクラシックカーを見る人もいれば、
偶然その場を通りかかって、
「あのクルマ、懐かしい」
と感じる人もいるかもしれません。
イベント会場だけで完結するのではなく、
街そのものが会場になる。
これも、
地域イベントとして非常に面白いポイントです。
なぜ人は「古いクルマ」に惹かれるのか
ここで、
少し考えてみたいことがあります。
最新のクルマとクラシックカー。
性能だけを比べれば、
最新のクルマの方が圧倒的に優れています。
燃費がいい。
安全性能が高い。
静か。
快適。
さまざまな運転支援機能もあります。
移動するための道具として考えれば、
新しいクルマの方が便利です。
それでも、
何十年も前のクルマを大切に所有し、
整備し、維持し続ける人がいます。
そして、
そのクルマを見るために、全国から多くの人が集まります。
なぜなのでしょうか。
おそらく、
クラシックカーの価値は、
「性能」だけでは測ることができないからです。
デザイン。
エンジン音。
機械を操作している感覚。
その時代の技術。
希少性。
そして、
そのクルマにまつわる記憶。
数字では表現できない価値があります。
クラシックカーは「記憶」を乗せている
クラシックカーイベントでは、こんな会話がよく聞かれます。
「昔、父親が乗っていた。」
「若い頃、このクルマに憧れていた。」
「初めて買ったクルマがこれだった。」
「子どもの頃によく見た。」
つまり、
クラシックカーを見ることは、
単に古いクルマを見ることではありません。
その人自身の記憶を、呼び起こすことでもあります。
クルマを見た瞬間、その時代の景色が蘇る。
一緒に乗っていた人を思い出す。
若かった頃を思い出す。
クラシックカーには、
人の人生が重なっています。
だからこそ、
クルマに詳しい人だけではなく、
いろいろな世代の人が楽しむことができるのでしょう。
「新しい=価値がある」とは限らない
私たちは普段、
新しいものに価値を感じることが多いです。
新しいスマートフォン。
新しい家電。
新しいサービス。
新しい店舗。
マーケティングでも、
「新商品」
「新発売」
「最新」
という言葉は、
人を惹きつけます。
しかし、
クラシックカーはその逆です。
古いことに価値があります。
製造されなくなった。
残っている台数が少なくなった。
部品が手に入りにくくなった。
当時の技術を知る人も減った。
時間が経つほど、
希少性が高まります。
これは、
クラシックカーだけではありません。
古民家。
古着。
レコード。
ヴィンテージ家具。
時計。
カメラ。
お酒。
多くの分野で、
時間が価値を生み出しています。
マーケティングというと、
新しいものをつくることばかり考えがちです。
しかし、
すでに存在しているものを、
大切に残すこと。
そこにも、
大きな価値があります。
糸魚川とクラシックカー
日本海クラシックカーレビューは、
2026年で第35回を迎えました。
35回という数字は、
決して短いものではありません。
一つのイベントが、これほど長い期間続く。
それだけで、
地域にとって一つの資産です。
毎年参加してきたオーナーがいる。
毎年楽しみにしてきた人がいる。
子どもの頃に見に来て、
大人になってまた訪れた人もいるかもしれません。
糸魚川といえば、
ヒスイ。
フォッサマグナ。
日本海。
山。
海産物。
さまざまな地域資源があります。
そこに、
長い年月をかけて、
「クラシックカーが集まるまち」
という一つのイメージも育ってきました。
地域ブランドは、
広告だけでつくられるものではありません。
何年も。
何十年も。
同じ活動を積み重ねることで、
少しずつ人の記憶の中につくられていきます。
35回続けば、イベントは「文化」になる
一回開催するものは、イベントです。
毎年開催すれば、
恒例行事になります。
そして、
20年。
30年。
それ以上と続いていけば、
それは少しずつ、
地域の文化になります。
日本海クラシックカーレビューも、
まさにそうではないでしょうか。
クラシックカーを持っている人だけのイベントではない。
毎年見に行く地域の人。
運営に関わる人。
出店する人。
応援する企業。
交通整理をする人。
参加するオーナー。
さまざまな人が関わることで、
イベントは地域の中に根付いていきます。
35年間で、
どれだけの人がこのイベントに関わってきたのでしょうか。
そう考えると、
一つのイベントが地域に与える影響は、
単純な来場者数だけでは測れないことが分かります。
イベントの価値は「何人来たか」だけではない
地域イベントを評価するとき、
どうしても数字に目が行きます。
来場者数。
売上。
経済効果。
SNSの閲覧数。
もちろん、
それらは重要です。
しかし、数字だけでは測れない価値もあります。
イベントをきっかけに、
初めて糸魚川を訪れる人がいる。
食事をする。
買い物をする。
街を歩く。
地域の人と話す。
「また糸魚川に来たい」
と思う。
そうした小さな接点が、
少しずつ地域との関係をつくっていきます。
マーケティングでは、
一度商品を買ってもらうことだけではなく、
その後も関係を続けてもらうことが重要です。
地域も同じです。
一回来てもらう。
そして、
もう一度来てもらう。
好きになってもらう。
誰かに話してもらう。
イベントには、
その最初の接点をつくる力があります。
「好きな人」がいる地域は強い
地域イベントを見ていると、
改めて感じることがあります。
それは、
「好きな人」の力です。
クラシックカーが好きな人。
大切に維持するオーナー。
イベントを楽しみにする人。
運営を続けてきた人。
そうした人たちの熱量があるから、
35回という歴史が生まれました。
地域活性化というと、
「地域全体を巻き込まなければならない」
と考えてしまうことがあります。
しかし、
最初から全員が好きになる必要はありません。
何かを、本当に好きな人がいる。
その人たちが集まる。
そこに興味を持つ人が増える。
やがて、
その地域を代表する文化になっていく。
これは、ブランドづくりにもよく似ています。
強いブランドには、ファンがいます。
そして、
ファン自身がその魅力を伝えてくれます。
地域にも、
同じことが言えるのかもしれません。
地方に必要なのは「新しいもの」だけではない
地方創生の話になると、
新しいものをつくることが注目されます。
新しい観光施設。
新しいイベント。
新しい商品。
新しい名物。
もちろん、
それも大切です。
しかし、
地域にはすでに、
たくさんの価値があります。
長く続いてきたイベント。
昔からある景色。
地域に根付いた文化。
地元の人が大切にしてきたもの。
大切なのは、
それらを改めて見つけることではないでしょうか。
日本海クラシックカーレビューも、
長い時間をかけて育ってきた、
糸魚川の一つの地域資産です。
マーケティングとは、
何かを新しくつくる仕事であると同時に、
すでにそこにある価値を見つけ、
伝える仕事でもあります。
最後の開催だからこそ見えてくるもの
イベントは、
開催されている間は、
「来年もあるもの」
だと思ってしまいます。
毎年開催される。
毎年同じ時期に人が集まる。
それが当たり前になっていきます。
しかし、
終わると分かったとき、
初めてその存在の大きさに気づくことがあります。
35回。
長い年月です。
その間に、
街も変わりました。
クルマも変わりました。
人も変わりました。
それでも、
クラシックカーが糸魚川に集まり続けました。
今回、
日本海クラシックカーレビューが最後の開催を迎えたことで、
改めて考えるべきなのは、
「終わった」ということだけではありません。
35年間で、何が残ったのか。
ということです。
クラシックカーを通じて生まれた人とのつながり。
糸魚川を訪れた人の記憶。
地域の人の思い出。
そして、
「糸魚川にはクラシックカー文化がある」
というイメージ。
イベントは終了しても、
そこから生まれたものまで、
すべて消えるわけではありません。
おしまい
2026年9月6日。
糸魚川市で、
第35回 日本海クラシックカーレビューが開催されました。
1974年以前に製造されたクラシックカー130台が集まり、
最後の開催となった今回も、
多くの人が往年の名車を楽しみました。
何十年も前につくられたクルマ。
便利さだけで考えれば、現代のクルマにはかないません。
それでも、人は古いクルマに惹きつけられます。
そこには、性能だけではない価値があるからです。
歴史。
思い出。
デザイン。
技術。
人とのつながり。
そして、
時間そのもの。
地域も同じなのかもしれません。
新しいものだけに価値があるわけではありません。
長い時間をかけて、
人々が大切にしてきたもの。
続けてきたもの。
受け継いできたもの。
そこには、
簡単には真似することのできない価値があります。
日本海クラシックカーレビューは、
35回で幕を閉じます。
しかし、
35年間で糸魚川に残したものは、
これからも人の記憶の中に残っていくのではないでしょうか。
イベントが終わっても、文化は残る。
そして、
その文化をどう次につないでいくのか。
そこからまた、
新しい地域の物語が始まるのかもしれません。

